診断のポイント
【1】口渇,多飲,多尿を主症候とする。
【2】下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンであるバソプレシン(AVP)の分泌に障害のある中枢性尿崩症と,腎集合管におけるAVPの作用に障害のある腎性尿崩症に分類される。
【3】鑑別すべき疾患として糖尿病と,多飲が原因となって多尿を呈する心因性多飲症がある。
緊急対応の判断基準
【1】渇感障害を伴う場合:一般に尿崩症患者は,口渇に応じて水分を摂取することによって体液量や血清ナトリウム濃度を維持している。一方で視床下部下垂体の病変によって尿崩症患者に渇感障害を伴う場合がある。このような患者は口渇感に応じた適切な水分摂取ができないため,著明な脱水症や高ナトリウム血症を呈し,補液や血清ナトリウムの補正などの緊急対応を必要とすることがある。
症候の診かた
【1】多量の低浸透圧尿を認める。
【2】夜間も症状が持続するため,患者は不眠を呈する。
【3】日常的に水分を確保したりトイレの位置を確認したりする必要があるため,患者のQuality of Life(QOL)が障害される。
【4】中枢性尿崩症は比較的急激に発症する場合が多い。
検査所見とその読みかた
【1】尿量:1日3,000mLまたは40mL/kg以上を呈する。
【2】血清ナトリウム濃度:正常の上限かやや上回る値を呈することが多い。
【3】血漿AVP濃度
❶定常状態:中枢性尿崩症で低値,腎性尿崩症で高値を示す。
❷高張食塩水負荷試験(5%高張食塩水を0.05mL/kg/分で120分間点滴投与):中枢性尿崩症患者では,血漿浸透圧(または血清ナトリウム濃度)高値においても,血漿AVP濃度の上昇が乏しい(図1図)。
【4】尿浸透圧
❶300mOsm/kg以下を呈する。
❷水制限試験(飲水制限後,3%の体重減少または6.5時間で終了)
■中枢性尿崩症,腎性尿崩症いずれにおいても尿浸透圧の上昇を認めない。心因性多飲症では尿