診断のポイント
【1】既知の慢性副腎不全。
【2】長期のステロイド使用と急激な減量(医原性副腎不全)。
【3】感染症,外傷などの誘因。
【4】低血圧,脱水,倦怠感,食欲不振,悪心・嘔吐,下痢,腹痛,発熱,意識障害。
【5】色素沈着(原発性副腎不全),女性における腋毛・恥毛の脱落。
緊急対応の判断基準
【1】最低限の検査として血中副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),コルチゾール濃度測定のための採血を行った後に直ちに治療を開始する。
【2】入院下での全身管理が必要となるため自施設で対応困難な場合は高次医療機関へ搬送する。初発例では初期治療後に詳細な内分泌検査が必要であり専門医療機関が望ましい。
症候の診かた
【1】低血圧,脱水,倦怠感,食欲不振,悪心・嘔吐,下痢,腹痛,発熱,意識障害などの非特異的所見から本症を疑うことが重要である。
【2】原発性副腎不全の場合ACTH,γ-メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)の分泌亢進により色素沈着がみられる。歯肉,手掌の皮溝,爪床,乳輪,手術痕などに顕著である。
【3】女性においては副腎アンドロゲンの分泌低下に伴い,腋毛・恥毛の脱落を認める。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査:以下の所見を参考にする。
❶好酸球増多:8%以上。
❷相対的好中球減少。
❸リンパ球増多。
❹貧血:男性13g/dL以下,女性12g/dL以下。
❺低ナトリウム血症:135mEq/L以下。
❻高カリウム血症:続発性副腎不全の場合レニン-アンジオテンシン系の刺激によりミネラルコルチコイドの分泌が保たれるため,認めない。
❼低血糖:70mg/dL以下。
❽低コレステロール血症:総コレステロール150mg/dL以下。
【2】内分泌検査
❶血中コルチゾール:安静時,早朝の測定で4μg/dL未満であれば副腎不全の可能性がきわめて高く,18μg/dL以上でほぼ否定的と考えられるが,副腎クリーゼの場合,強いストレス下に