診療支援
診断

インスリン受容体異常症
††
Insulin Receptor Disease
長坂 昌一郎
(昭和大学藤が丘病院糖尿病・代謝・内分泌内科・教授)

診断のポイント

【1】インスリン受容体異常症A型(表1)

❶境界型,糖尿病など耐糖能障害(必発ではない)。

❷高インスリン血症とインスリン抵抗性。

❸黒色表皮症の存在。女性では多毛,月経異常,多囊胞性卵巣症候群の存在。

❹インスリン受容体遺伝子異常の証明。

【2】インスリン受容体異常症B型(表2)

❶境界型,糖尿病など耐糖能障害,あるいは低血糖。

❷インスリン受容体抗体の存在。

❸ほかの自己免疫疾患の合併。

緊急対応の判断基準

 インスリン受容体の高度の機能低下により強いインスリン抵抗性を示すDonohue症候群(妖精症)やRabson-Mendenhall症候群では,胎内発育不全,新生児期からの高血糖,特徴的な顔貌,発育障害,肝脾腫などがみられ,緊急対応が必要である。有効な治療法に乏しく,生後1年以内に死亡することが多い。

症候の診かた

【1】黒色表皮症:高インスリン血症に伴う頸部,腋窩の色素沈着で(図1),発見の契機となることが多い。ただし特異的な症候ではなく,単純性肥満や内臓悪性腫瘍でもみられる。

【2】多毛,無月経ないし月経異常,陰核肥大,多囊胞性卵巣:女性では,高インスリン血症による卵巣機能異常により高アンドロゲン血症をきたし,これらがみられることがある。インスリン受容体異常症A型は,思春期女児の無月経から発見されることが多い。思春期の生理的なインスリン抵抗性と相まって,顕性化すると考えられる。

【3】皮疹,Raynaud現象,関節腫脹など:インスリン受容体異常症B型では,膠原病などの他の自己免疫疾患によりこれらがみられることがある。

検査所見とその読みかた

【1】高インスリン血症

❶インスリン抵抗性のため,空腹時の血中インスリンは50μU/mL以上のことが多く,同時に血中Cペプチドも高値である。

❷ブドウ糖負荷試験では,負荷後の血中インスリンが1,000μU/mL以上となることもある。ただし軽

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