診療支援
診断

異所性ホルモン産生腫瘍
Ectopic Hormone-producing Tumor
岩﨑 泰正
(高知大学名誉教授/特任教授)

診断のポイント

【1】ホルモン〔副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),抗利尿ホルモン(AVP),副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP),線維芽細胞増殖因子23(FGF23)など〕過剰の症状がある。

【2】本来の内分泌臓器が責任病巣でないことを示唆する所見がある。

【3】産生部位の特定に難渋することが少なくない。

【4】しばしば症状が重篤で,予後に影響する。

【5】腫瘍の完全摘除により完治が可能である。

緊急対応の判断基準

【1】重症の異所性ACTH産生:敗血症や感染症のリスクが高く,高度の感染症管理を要する。

【2】異所性AVP産生腫瘍による重症低ナトリウム(Na)血症:専門医が治療を行う.補正時には浸透圧性脱髄症候群の防止に細心の注意を払う。

【3】PTHrP産生腫瘍:高カルシウム(Ca)血症クリーゼの発症に留意する。

症候の診かた

【1】異所性ACTH産生腫瘍:肺小細胞癌が原因の場合,Cushing徴候(満月様顔貌や中心性肥満など)よりも,難治性の高血圧や耐糖能異常の診療過程で発見されることが少なくない。

【2】異所性AVP産生腫瘍:低Na血症が発見の手がかりになる。

【3】PTHrP産生腫瘍:高Ca血症による全身倦怠感や意識障害で見いだされることが多い。

【4】腫瘍性骨軟化症:FGF23過剰産生による成人骨軟化症が発見の契機となる。

検査所見とその読みかた

【1】「異所性」の診断:異所性ACTH産生腫瘍は,大量デキサメタゾン抑制試験による抑制の欠如,デスモプレシン酢酸塩水和物(DDAVP)負荷に対する反応不良などの特徴的な機能検査所見から,下垂体性Cushing病と鑑別する。鑑別が困難な場合は下錐体静脈(または海綿静脈洞)サンプリングを行う。

【2】腫瘍の局在診断:異所性ACTH産生腫瘍は肺小細胞癌や神経内分泌腫瘍を念頭において検索するが,責任病巣が同定できない場合もある。AVP産生腫瘍は肺小細胞癌が多い

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