[Ⅰ]家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)
診断のポイント
【1】高LDL-C血症を呈する。
【2】早発性冠動脈疾患発症リスクがきわめて高い。
【3】常染色体優性遺伝疾患である。
【4】FHホモ接合体は,血清総コレステロール値600mg/dL以上,小児期からみられる黄色腫と動脈硬化性疾患,両親がFHヘテロ接合体である特徴を有する。
【5】FHヘテロ接合体は一般人口200~500人に1人の割合で存在し,ホモ接合体は約100万人に1人の頻度で認められる。ヘテロ接合体の診断基準を表1図に示す。
症候の診かた
【1】皮膚結節性黄色腫:眼瞼黄色腫は含まない。
検査所見とその読みかた
【1】アキレス腱肥厚:X線写真により9mm以上にて診断する。患者が若年齢の場合,アキレス腱などの肥厚を認める例が少ないため留意する。
【2】LDL-C高値:250mg/dL以上の場合,FHを強く疑う。
【3】原因遺伝子の異常:LDL受容体の完全欠損もしくは発現低下により高LDL血症を呈する。アポリポ蛋白B-100,機能獲得型のproprotein convertase subtilisin/kexin type 9(PCSK9)の異常も,同様の症候を呈する。
確定診断の決め手
【1】高LDL-C血症,家族歴,腱黄色腫のうち2つを認めれば確定診断となる。
【2】FHと診断した際には,その家族についても調べることが望ましい。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】続発性脂質異常症をきたす疾患:糖尿病(→),甲状腺機能低下症(→),ネフローゼ症候群(→)などを除外する。
【2】家族性複合型高脂血症:腱黄色腫を合併しないこと,small dense LDLの存在,家系内に他のタイプの脂質異常症(Ⅱa型,Ⅱb型,Ⅳ型)が存在すること,小児ではLDL-CがFHほど上昇しないことなどから鑑別しう
関連リンク
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- 今日の診断指針 第8版/原発性甲状腺機能低下症
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- 臨床検査データブック 2023-2024/リポ蛋白リパーゼ〔LPL〕 [保] 219点
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