診療支援
診断

アナフィラキシー
Anaphylaxis
中村 陽一
(横浜市立みなと赤十字病院・アレルギーセンター長)

診断のポイント

【1】アナフィラキシーは「アレルゲンなどの侵入により,複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され,生命に危機を与えうる過敏反応」である。

【2】診断基準というよりも,臨床的な判断に基づいて診断する。

【3】アレルゲンの可能性がある物質の摂取や曝露ののち,数分~数時間で起こる,皮膚・粘膜症状(全身のじん麻疹・瘙痒・紅潮など,あるいは口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)に加えて,呼吸器症状(呼吸困難・喉頭閉塞感・喘鳴・低酸素血症など),循環器症状(血圧低下・意識障害など),持続する消化器症状(嘔吐,けいれん性腹痛など)のうち少なくとも1つが合併する場合にアナフィラキシーを疑う(図1)。

【4】アナフィラキシーでは2つ以上の器官系にアレルギー症状が生じるが,皮膚・粘膜症状は頻度が高く(80~90%),診断のポイントとなる。その他の症状の頻度は,呼吸器症状(~70%),消化器症状(~45%),心血管症状(~45%),中枢神経症状(~15%)である。ただし10%程度は皮膚・粘膜症状を伴わない場合もある。

症候の診かた

【1】重症度の判定は不可欠である(表1)。グレード3(重症)およびグレード2(中等症)で過去に重篤なアナフィラキシーの既往がある場合,症状の進行が激烈な場合,気管支拡張薬の吸入で改善しない呼吸器症状などに対しては,即座にアドレナリン筋注を実施する。

【2】アナフィラキシーにおける呼吸停止または心停止までのおおよその時間は,薬物5分,ハチ毒15分,食物30分との報告があり,わが国におけるアナフィラキシーによる死亡原因の二大原因が薬物とハチ毒によるものであることを裏付けるものである。

【3】後述のごとくアナフィラキシーは,急性期を脱して数時間後に二相性の症状が出現することがあり,成人の最大23%,小児の最大11%に発生すると報告されている。

検査所見とその読みかた

【1】ヒスタミン

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