診療支援
診断

全身性強皮症
Systemic Sclerosis(SSc)
竹原 和彦
(金沢大学教授・皮膚分子病態学)

診断のポイント

【1】全年齢にみられるが,圧倒的に中年女性に好発。

【2】皮膚硬化が主要な症状(図1)。

【3】Raynaud現象,爪郭部毛細血管血流異常(図2),皮膚潰瘍などの末梢循環障害。

【4】全身性強皮症特異抗核抗体のいずれかが約90%で検出。

【5】診断基準:わが国の診断基準では皮膚硬化が必須(表1),欧州リウマチ学会/米国リウマチ学会(EULAR/ACR)の2013年の新基準では皮膚硬化を伴わない早期例においても診断可能(表2)。

緊急対応の判断基準

【1】強皮症腎クリーゼ:本症は一般に慢性に経過するが,強皮症腎クリーゼのみは急速に発症する。

❶急激な血圧上昇,頭痛・めまい・立ちくらみなどの臨床症状,血清クレアチニン値の上昇を認める。

❷早期にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬にて降圧することが必須で,それを逸すると死亡や永久透析に移行するリスクがある。

❸発症早期,高度な皮膚硬化,抗RNAポリメラーゼ抗体陽性例などリスクの高い患者では,毎日の自己血圧測定を指導する。

症候の診かた

【1】皮膚硬化:重症例ではその判断は容易だが,軽症例では熟練を要する。全身の皮膚硬化の重症度は,全身の17部位で0~3点のスコアをつけ,それを合計するmRSS(modified Rodnan skin thickness score)が国際的に広く用いられているが,本邦では十分には普及していない。

【2】Raynaud現象:診察室での再現は難しいので,寒冷発作により発作的に蒼白または紫色に手指の色が変化するかを問診する。その際,Raynaud現象の見本の写真を見せることが望ましい。

【3】爪郭部の血流障害:肉眼でも2本以上の指に爪上皮出血点が観察される場合は本症が強く疑われる。さらに,毛細管顕微鏡により詳しく観察することが望ましい(EULAR/ACRの診断基準の項目に含まれている)。

【4】労作時呼

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