診療支援
診断

劇症型A群レンサ球菌感染症
††
Invasive Group A Streptococcal Infection
朝野 和典
(大阪大学医学部附属病院感染制御部・教授)

診断のポイント

【1】Lancefield分類A群のレンサ球菌,すなわち化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)による敗血症性ショックの病態である。

【2】糖尿病などの基礎疾患を有する患者のみならず,健常人にも突然発症し,急速に進行する劇症型感染症である。

【3】ほぼ24時間以内に敗血症性ショック,多臓器不全の病態を呈する。

【4】皮膚軟部組織病変としての壊死性筋膜炎を合併する場合がほとんどであるが,皮膚所見が明らかでない場合もある。

【5】壊死性筋膜炎は,病態の特徴から「人食いバクテリア」とよばれ,社会的にセンセーショナルに取り上げられることもある。

緊急対応の判断基準

 急速に多臓器不全に陥るので,診断したり,疑った時点で全症例迅速に外科的治療と集中治療の開始が必要である。

症候の診かた

【1】初発症状は咽頭痛,発熱,消化管症状(食欲不振,悪心・嘔吐,下痢),全身倦怠感,低血圧などの敗血症症状,筋痛などであるが,明らかな前駆症状がない場合もある。

【2】後発症状として,わが国の報告によると,肝障害は56.3%,腎障害は72.9%,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は31.3%,播種性血管内凝固症候群(DIC)は70.8%,軟部組織壊死(壊死性筋膜炎および筋炎を含む)は79.2%,紅斑様皮膚発赤疹は13.5%,中枢神経症状は38.5%の頻度でみられた。

【3】日常生活を営んでいた状態から24時間以内に多臓器不全が完結するほどの急速な進行を示す。

【4】敗血症性ショック,いわゆるwarm shockの病態を呈し,ショックにもかかわらず初期には四肢末梢が温暖である。

【5】壊死性筋膜炎は,蜂巣炎や丹毒との鑑別が必要で,疑った場合には切開を行い,浅層筋膜の壊死の有無を確認する。また,暗褐色の水疱が皮膚表面にみられることも多い。

検査所見とその読みかた

【1】バイタルサイン:敗血症の定義を

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?