診療支援
診断

解熱鎮痛薬中毒
Antipyretic and Analgesic Poisoning
水谷 太郎
(茨城県西部医療機構・理事長)

 臨床的に重要でよくみるアセトアミノフェン,アスピリンについて述べる。

診断のポイント

【1】市販薬にも含まれ入手が容易であることから,誤飲の小児や自殺企図の成人など,幅広い年齢層に発生する。

【2】アセトアミノフェンもしくはアスピリン過量摂取の現病歴もしくは疑いがある。

【3】アセトアミノフェン中毒の典型的臨床症状は24時間以内に出現する嘔気・嘔吐(必発ではないことに注意)。

【4】アスピリン中毒では耳鳴り,難聴,腹痛,嘔吐,発汗,頻脈,過換気,けいれん,高体温などの症状。

【5】薬物の空包装容器などが周囲に残されている場合はかなり参考になるが,自殺企図などの場合は意図的に処分されることもあるので,摂取量は総合的に判断する。

緊急対応の判断基準

【1】アセトアミノフェン中毒:7.5gもしくは150mg/kg以上の摂取で肝障害発生の可能性がある。

【2】アスピリン中毒:150mg/kg以上で中毒量となり,500mg/kg以上で致死的となる可能性がある。

【3】摂取量の推定は困難な場合が多いが,上記【1】【2】に該当する場合は高次医療機関に転送することが望ましい。

症候の診かた

【1】アセトアミノフェン中毒:来院時には,身体所見,バイタルサインに異常がないことが多いので注意が必要である。

【2】アスピリン中毒:呼吸数の増加は重症化予測因子として重要である。

検査所見とその読みかた

【1】アセトアミノフェンの急性・単回中毒

❶摂取後4時間以降の血中濃度を測定し,摂取後経過時間と血中濃度の関係がプロットされた本中毒治療ノモグラムを適用して解毒薬アセチルシステイン投与の適応を決定する(図1)。

❷摂取後4時間未満の値は参考にならないので注意する。

❸治療方針決定のための測定は1回行えば十分である。

【2】アスピリン中毒

❶血液ガス分析器を用い,アシドーシスの程度,電解質異常,血糖値,乳酸値を評価する。

❷経時的(2~4時

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