診断のポイント
【1】マルチキナーゼ阻害薬使用患者。
【2】内服開始から早期に症状が出現。
【3】初期は過重部位に限局した不快感から発赤,進行すると水疱形成を生じる。
【4】原因薬剤投与前の皮膚症状の確認と予防が重要。
緊急対応の判断基準
手足など過重部位に疼痛を伴い日常生活に支障をきたす発赤や水疱形成を認めた場合,もしくはベリーストロング以上のステロイド外用薬を2週間使用しても悪化する場合は,原因薬剤を中止し,皮膚科専門医に紹介。
症候の診かた
手足などの過重部位に生じる違和感,発赤,水疱形成などの皮膚症状で診断ができる(図1図)。
確定診断の決め手
【1】マルチキナーゼ阻害薬使用患者の早期から出現する皮膚症状。
【2】手掌や足底など過重部位に生じるが,患者のライフスタイルにより膝や肘にも生じる。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】足白癬(→):趾間にも水疱や落屑を認める場合が多い。
【2】皮膚2次感染:匂いや痛み,炎症の範囲が限定される場合は細菌培養を施行する。
【3】胼胝,鶏眼:過重部位に限局した角化。鶏眼は圧迫にて激痛を生じる。
確定診断がつかないとき試みること
糖尿病が基礎疾患にある患者では,痛みを伴わない水疱形成や2次感染,足白癬と鑑別を要する場合がある。
合併症・続発症の診断
【1】2次感染:亀裂,水疱からの2次感染。細菌培養を行う。
【2】足白癬:検鏡にて真菌の有無を調べる。
予後判定の基準
基本的には軽症になれば原因薬剤を1段階減量して再投与可能である。
経過観察のための検査・処置
【1】日常生活の作業に差し支えない程度の違和感やわずかな発赤:ベリーストロング以上のステロイド外用薬を2回/日。原因薬剤は休薬の必要なし。
【2】日常生活の作業や歩行に差し支える皮膚症状(疼痛を伴う発赤や水疱形成):原因薬剤の休薬とともにランクアップしたステロイド外用薬を2回/日。
【3】発赤が拡大し,大型の水疱形