診療支援
診断

水疱性類天疱瘡
Bullous Pemphigoid
西江 渉
(北海道大学大学院准教授・皮膚科)

診断のポイント

【1】60歳以上,特に70歳台後半以上の高齢者。

【2】多発する緊満性水疱と瘙痒の強い浮腫性紅斑。

【3】病理組織学的に多数の好酸球浸潤を伴う表皮下水疱。

【4】BP180を含む抗基底膜部自己抗体の同定(免疫所見)。

症候の診かた

【1】皮膚所見

❶水疱は破れにくく緊満性で,大きさはさまざまである。通常,強い瘙痒を伴う浮腫性紅斑を併発する(図1)。

❷糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬内服に関連し発症した症例では,紅斑に乏しい症例が多い。

【2】粘膜所見:約20%の症例で,難治性の歯肉,頰粘膜,口蓋粘膜のびらんなど,粘膜病変を伴う。

検査所見とその読みかた

【1】スクリーニング検査:末梢血好酸球数とIgE値の増加がみられる症例が多い。

【2】病理組織所見:皮膚生検を施行すると,多数の好酸球浸潤を伴う表皮下水疱を認める(図2)。

【3】抗基底膜部自己抗体の同定

❶80~90%で,抗BP180自己抗体を認める(抗BP180 NC16a抗体)。

❷DPP-4阻害薬内服中に発症する症例では,本検査法は低値あるいは陰性となる場合が多いという特徴がある。しかし本検査法が陽性であっても,薬剤性は否定できない。

確定診断の決め手

【1】緊満性水疱と瘙痒性紅斑を主とする皮膚症状。

【2】病理組織所見。

【3】抗BP180自己抗体を主とする抗基底膜部自己抗体の同定。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】虫刺症

❶抗基底膜部自己抗体は陰性。

❷疥癬では手指間の疥癬トンネルが特徴。

【2】水疱性膿痂疹

❶水疱は弛緩性。

❷抗基底膜部自己抗体は陰性。

❸細菌培養での黄色ブドウ球菌の検出。

確定診断がつかないとき試みること

【1】診断困難な症例では,蛍光抗体直接法および間接法による抗皮膚基底膜部自己抗体の同定を試みる。施行困難な場合,専門施設へコンサルトあるいは紹介する。

【2】特に本症と,自己抗体が皮膚のⅦ型コラーゲンを標的とする後天

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