[Ⅰ]単純疱疹
診断のポイント
【1】同じ領域に繰り返す。
【2】中心臍窩を有する小水疱の集簇。
【3】皮疹出現前の前駆痛。
症候の診かた
【1】皮疹:口唇縁,性器などに中心臍窩を有する小水疱が集簇する(図1図)。
【2】疼痛:初診時では皮疹出現時に,再発性のものでは皮疹が出現する前にムズムズ,チクチクとした痛み(前駆痛)が出現することが多い。
検査所見とその読みかた
【1】Tzanck試験:水疱蓋,びらん面をスライドグラスにスタンプし,Giemsa染色液で固定,染色後に顕微鏡でウイルス感染した巨細胞を観察する。ただし単純疱疹と帯状疱疹の鑑別はできない。
【2】イムノクロマト法:水疱内容物からウイルス抗原を検出する。性器ヘルペスで適応あり。
確定診断の決め手
【1】疼痛を伴う小水疱の集簇。
【2】性器ヘルペスの場合はイムノクロマト法でのウイルス抗原の検出。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】細菌性毛包炎
❶水疱内のTzanck試験で好中球主体。
❷細菌培養。
【2】固定薬疹(→)
❶特定の薬剤を摂取したのちの粘膜疹。
❷皮疹はびらん主体で,粘膜以外にも皮膚の円形色素沈着が存在することが多い。
【3】Behçet病(→)
❶陰部,口腔内の痛みの強く,深い潰瘍。
❷イムノクロマト法でウイルス抗原陰性。
確定診断がつかないとき試みること
【1】非典型的な症例では皮膚生検,免疫組織染色が有用なことがある。
【2】ワンポイントでの抗体価測定は既往の有無の評価に過ぎず,診断はできない。
合併症・続発症の診断
Kaposi水痘様発疹症:アトピー性皮膚炎に生じた播種性の単純疱疹であり,発熱,リンパ節腫脹など全身症状を伴うことが多い。
治療法ワンポイント・メモ
薬物療法:再発性で軽症の口唇ヘルペスでは抗ヘルペスウイルス薬の外用を,それ以外の病態では内服・点滴静注など全身療法を行う。
さらに知っておくと役立つこと
再発頻度の高い(年6回以上)性