本項では主に色素細胞母斑について記す。その他の母斑については[さらに知っておくと役立つこと]にまとめた。
診断のポイント
【1】小児期発症を除き,6~7mm以下の小型の黒色病変。
【2】半年~1年の間に形の変化,新しい色の出現がない。
症候の診かた
【1】臨床型:色素細胞母斑はいくつかの臨床型が提案されている。
❶Unna母斑:頸部や体幹に好発し,常色から淡紅色の軟らかい有茎性の結節として認められ,軟性線維腫に似る。
❷Miescher型
■顔面に好発し,ドーム状に隆起する黒,赤あるいは常色を呈する多少の固さをもつ結節である。
■剛毛を伴うことが多い。
❸Clark母斑
■体幹と四肢近位部に好発し,中央が少し隆起する褐色調の斑状病変として認められる。
■中央の色が辺縁より濃く,サイズもメラノーマとの鑑別点である7mmを超えることも多い。
■白人に好発する表在拡大型のメラノーマとの鑑別が必要となる(日本人では20~30%)。
❹Spitz母斑
■小児の顔面や女性の下肢に好発し,小児では紅色,成人では黒から褐色を呈することが多い。
■組織学的にメラノーマとの鑑別が問題となることが少なくない。
❺青色母斑:真皮内にメラニンを含有したメラノサイトの増殖と線維化を伴う小型の斑で,固く触れる。
❻太田母斑
■黄色人種の思春期までに三叉神経第1,2枝領域に片側性に発症する青色から褐色の斑である。
■女児に多い。
■真皮内にメラニンを含有したメラノサイトが散在している。
【2】爪の黒色線条
❶爪の黒い線は爪甲色素線条といい(図1図),ほとんどすべてが色素細胞母斑である。
❷人口の1%弱に認められる。
❸半年~1年で太さや後述のような変化がなければ経過をみてよい。
検査所見とその読みかた
【1】サイズ
❶成人後(安全域を十分にとっても思春期以後)に初めて発見した色素斑で,サイズが6~7mm以上に大きくなった場合は皮膚科専門医を受診する(図2図)
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