診断のポイント
【1】中高年男性が罹患する。
【2】多彩な下部尿路症状を訴える。
【3】下部尿路症状により生活の質(QOL)が低下している。
【4】原因となる他疾患を除外する。
【5】前立腺が小さくても前立腺肥大症を否定できない。
緊急対応の判断基準
前立腺肥大症(BPH)に起因する合併症として急性尿閉と有熱性尿路性器感染症がある。
【1】急性尿閉:アルコール摂取などが誘因となり,下腹部(膀胱部)の膨隆と疼痛により推測される。導尿による尿排出が必須である。
【2】有熱性尿路性器感染症:尿排出障害により細菌性の急性前立腺炎や急性精巣上体炎が起こると,下部尿路症状に加えて高熱を呈する。尿のドレナージとともに適切な抗菌薬の投与が必要となる。
症候の診かた
【1】患者の受診契機は,QOLの低下につながる下部尿路症状の存在である。
【2】BPHに伴う代表的な下部尿路症状を定量化するために国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score:IPSS)を使用する。
❶残尿感,昼間頻尿,尿線途絶,尿意切迫感,尿勢低下,腹圧排尿および夜間排尿回数の7つの下部尿路症状の頻度およびQOLスコアについて自己記入式で回答する(表1図)。
❷IPSSが0~7点を軽症,8~19点を中等症,20~35点を重症と判定する。
❸ただし,IPSSは他の疾患でも高値となることもがあるため,後述する鑑別診断が必要である。
検査所見とその読みかた
【1】病歴の聴取
❶脳・脊髄疾患,神経疾患,糖尿病,直腸癌などに対する骨盤内手術の既往は神経因性膀胱の原因となる。
❷高齢者では多数の薬物を服用していることもまれではなく,他科で処方された抗うつ薬,抗不整脈薬,鎮痙薬などの抗コリン作用を有する薬剤による薬剤性下部尿路機能障害にも注意が必要である。
【2】身体所見:直腸診により前立腺の異常を評価する。骨様・石様の硬結は
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