診断のポイント
【1】小児の消化性潰瘍は,新生児期を含めてどの時期にもみられるが,10歳以上の年長児に多い。
【2】Helicobacter pylori(H. pylori)感染に伴うものは胃潰瘍より十二指腸潰瘍のほうが多い。
【3】H. pylori感染率の低下に伴い,小児の消化性潰瘍はまれになっている。
【4】新生児・乳幼児では腹痛の性状がはっきりしないため潜血便に注意する。
【5】潰瘍を認めた場合,H. pylori感染を疑う所見があれば培養と薬剤感受性試験を実施する。
緊急対応の判断基準
吐血・下血,ショック症状,腹部単純X線写真で遊離ガス像などを認める場合には,緊急内視鏡,外科治療が必要となることがあり,高次医療機関へ搬送する。
症候の診かた
【1】腹痛
❶消化性潰瘍を疑う症候は,心窩部痛や上腹部痛。
❷食事との関連は胃潰瘍では食後,十二指腸潰瘍では空腹時に痛みを訴えることが多い。
❸腹痛による夜間覚醒は重要な症候。
【2】顔色不良:出血量が多ければ貧血による顔色不良を呈する。
【3】吐血・下血:上腹痛がなくても消化性潰瘍の可能性あり。
【4】身体所見
❶心窩部あるいは右季肋部(まれに左季肋部)の圧痛を認める。
❷潰瘍穿孔に至れば筋性防御を認める。
❸アレルギー性紫斑病(IgA血管炎)では下腿を中心とした出血斑と浮腫,関節痛などを伴う。
検査所見とその読みかた
消化性潰瘍の主な原因はH. pylori感染であるが,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),Crohn病,アレルギー性紫斑病(IgA血管炎),Zollinger-Ellison症候群,サイトメガロウイルス感染症なども原因となる。
【1】血液検査
❶合併症のない消化性潰瘍では血液検査では異常はない。
❷出血量が多ければ貧血,BUN/Cr比の上昇を認める。
【2】上部消化管内視鏡検査
❶胃または十二指腸において粘膜筋板を越える粘膜欠損を認める。
❷病期は
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