【定義】
幻覚は,さまざまな症候群のうち,知覚の障害のなかの妄覚に含まれる.妄覚には,そのほかに錯覚が含まれるが,前者がそれに対応した外界からの刺激を伴わない知覚,すなわち“対象なき知覚”であるのに対して,後者は歪められて知覚する現象であり,対象が実在するか否かで区別される.Jaspersは,幻覚を真性幻覚と偽幻覚に分け,前者は真に知覚性を有するもの,すなわち明瞭に外界に定位され,客観性,実在感を伴うもの,後者は知覚性が弱く,内部の主観的空間に位置し,表象に近いものとしている.しかし,統合失調症患者の多くは,表象に近い幻覚についても実体性を強く訴えることも少なくなく,そういう意味では妄想に近い特徴を有することが多い.また,幻覚は複雑性から,閃光や色,単純な音など,意味ある形態や内容をもたない感覚要素からなる要素幻覚,人物の姿や物体,言葉や音楽などのように,多くの要素が組み合わさった複雑な内