◆疾患概念と定義
遅発性統合失調症は,高齢発症の統合失調症を意味するものであるが,主に2つの問題からその定義はあいまいである.1つは遅発性をどの年齢層とみるかで,40歳以上から60歳未満とするドイツ語圏と,60歳以上とする英語圏とで歴史的対立があった.前者は統合失調症全体からその晩発例の特徴を見いだそうとしたM.Bleulerの遅発統合失調症Spätschizophrenieを,後者は老年期精神障害全体のなかでの(特に認知症との)鑑別という視点からRothが提唱した遅発パラフレニーlate paraphreniaを礎としている.2つの概念が成立した背景・提唱者の視点が異なるために,両者の示す病像は一致していない.どちらが正しいと判断できる絶対的な指標がない以上,われわれは,それぞれを確立した疾患単位としてではなく提唱された類型概念としてとらえなければならない.この対立を解消するために40歳から60歳未満を遅発性統合失調症,60歳以降に発症するものを最遅発性統合失調症様精神病very late onset schizophrenia-like psychosisとよぶ妥協案(1999)が提出されたが,文献にはまだ散見される程度しか定着していない.
2つ目の問題点は精神疾患分類の根幹にかかわっている.現時点でも統合失調症は疾患単位としては確立していない類型概念である.ここには統合失調症をどのように定義するかという問題がある.さらに今日では「内因性精神病の二分法がはたして有効か」ということまでもが問われ始めている.結局見送られた形になってはいるが,DSM-5への改訂に向けて,統合失調症と気分障害の二分法を廃したディメンショナル・アプローチが真剣に検討されていた.われわれは統合失調症の典型例(理念型)を思い浮かべるときに,破瓜型,緊張型,あるいは妄想型のいずれかを思い浮かべる.かつ
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