診療支援
治療

双極性障害の維持療法
maintenance treatment of bipolar disorder
加藤忠史
(理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チーム・チームリーダー)

◆疾患概念

【定義・病型】

 双極性障害のうち,主なものは,双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害である.一度でも躁状態があれば,双極Ⅰ型障害と診断される.抑うつエピソードと軽躁病エピソードがあれば,双極Ⅱ型障害と診断される.

 その他,他の特定される双極性障害および関連障害には,軽躁状態の期間が基準を満たさない程度の場合などが含まれる.

【病態・病因】

 躁状態,うつ状態に伴って,おそらくドパミンをはじめとするモノアミンの変動が生じていると推定される.

 双極性障害では,血液細胞で細胞内カルシウム濃度の上昇,MRIで皮質下高信号領域がみられること,ゲノムワイド関連研究や全ゲノム解析でカルシウムチャネル関連遺伝子との関連が報告されていること,気分安定薬に神経保護作用があることなどから,その病態に,神経細胞の脆弱性,あるいは可塑性の異常があると推定される.

【疫学】

 わが国における生涯罹患率は,Ⅰ型,Ⅱ型を合わせて1%程度と報告されている.

【経過・予後】

 ほとんどの患者が再発すると考えられている.双極性障害が,年齢とともに自然に回復することは少なく,病相を反復するたびに,再発までの期間が短縮するという特徴がある.精神病症状は病相反復に伴って減る傾向がある.神経心理学的検査では,統合失調症よりは軽度であるが,認知機能障害がみられる.しかし,これが治療薬の影響か,疾患によるものかについては,明らかになっていない.また,双極性障害患者では,病相と関係なく,衝動性がみられる場合がある.また,双極性障害患者では,他の疾患に比して,認知症を発症するリスクが高いと報告されている.

◆診断のポイント

 うつ状態で受診した際に,躁状態および軽躁状態の病歴を確認することが重要である.「気分が高ぶりすぎて,面倒なことになったことがありますか」といった質問をするとよいが,病識が乏しいために,躁状態の既往があっても,こうした質問を

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