◆疾患概念
【定義・病型】
年4回以上のエピソード(躁病,軽躁病,抑うつ)を呈する場合をラピッドサイクラー(RC,急速交代型)と定義する.若年発症で発症初期からRCの場合と,長期経過ののちにRCとなる場合とに大きく分けられる.
エピソードの間欠期に寛解を伴わない場合のほうが,より治療反応性が悪い.
【病態・病因】
双極性障害は,再発を反復するごとに再発までの間隔が短くなる特徴があり,こうしたメカニズムで長期経過ののちにRCとなる場合がある.抗うつ薬の持続的投与がRCを引き起こしている場合も多い.また,リチウム(リーマス薬)は甲状腺機能低下の副作用を引き起こすことがある.リチウムによる潜在性甲状腺機能低下症は,病相の頻発化の誘因となりうる.また,慢性的なストレスもRC化の誘因となる.依存性薬物の乱用や,L-ドパその他のドパミン作動薬なども,RCの原因になりうることが指摘されている.
RCが遺伝的に異なった一群であるとか,他の双極性障害と異なった臨床単位であるという仮説に基づいた研究の結果は否定的なものが多く,双極性障害の経過中における1つの状態像と考えたほうがよい.
ただし,RCのなかでは少数派であるが,若年発症で,発症時からRCの場合は,以前わが国で若年性周期性精神病などとよばれていた,内分泌的な要因の関与する一群である可能性もある.しかし,こうした観点からの実証的な研究は少なく,詳細は不明である.
【疫学】
RCは双極性障害の5-20%にみられると報告されている.RCは女性に多く,双極Ⅱ型に多い.また,軽度の甲状腺機能低下を伴う場合が多い.数日ごとに病相を繰り返すultra-rapid cyclingの症例報告もあるが,まれである.
【経過・予後】
多くの患者では,RC状態は数年で改善する.RCの患者では自殺のリスクが高いと報告されている.
◆治療方針
A.治療方針の概要
抗うつ薬を
関連リンク
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- 今日の治療指針2023年版/うつ病性障害(うつ病)
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