診療支援
治療

進行性核上性麻痺
progressive supranuclear palsy (PSP)
神田 隆
(山口大学大学院教授・神経内科学)

◆疾患概念

【概念・定義】

 40歳以降に発症し,①緩徐に進行するパーキンソニズムparkinsonism,②認知症と③核上性眼球運動障害を中核症状とする孤発性の神経変性疾患である.PSPと略して呼称されることが多い.病理学的には,淡蒼球,視床下核,小脳歯状核,赤核,黒質,脳幹被蓋の神経細胞が脱落して神経原線維変化を認め,同部位の神経細胞およびグリア細胞内に異常リン酸化タウtau蛋白(4リピート型優位)が蓄積するという特徴をもつ.特に,異常リン酸化タウの蓄積によって生じる房状アストロサイトtuft-shaped astrocyteの出現が本症に特徴的な病理所見であるといわれる.

【病態・病因】

 タウ蛋白の異常が病因と関連していると考えられる疾患群(タウオパチーtauopathy)の1つである.しかし,どうして異常にリン酸化したタウ蛋白が神経細胞やグリア細胞に蓄積するのかについては現時点では不明.

【疫学】

 わが国での疫学調査の結果によると,有病率は人口10万人当たり5.8人とされている.男性に多く発症する.

【経過・予後】

 緩徐進行性で薬物効果に乏しく,予後不良の疾患である.発症してから車椅子が必要になるまでが平均2-3年,臥床状態になるまでが4-5年とされる.平均罹病期間は5-9年という報告が多いが,下記で述べるすくみ足から発症する亜型(PAGF)では進行は遅く,全経過は10年を超えることが多い.直接死因は肺炎や誤嚥による窒息などが多数を占める.

◆診断のポイント

 臨床症状が何といっても診断の決め手である.典型的な症状がそろっていれば診断は容易であるが,非定型例の確定診断は思いのほか難しい.診断基準としては,厚生労働省の特定疾患PSP診断基準が国内では汎用されている.国際的にはNINDS-SPSP診断基準(Neurology 47:1-9, 1996)がよく使われる.NINDS-SP

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