診療支援
治療

硬膜下血腫
subdural hematoma
開道貴信
(国立病院機構奈良医療センター・脳神経外科医長)

◆疾患概念

【定義・病型】

 慢性硬膜下血腫chronic subdural hematomaは受傷から3週間以上経て硬膜下に血液が貯留した状態である.受傷後3日以内は急性acute,4日-3週は亜急性subacute,3週以降は慢性chronicと定義されるが,硬膜下血腫は急性・亜急性と慢性で病態が異なる.慢性硬膜下血腫について記す.

【病態・病因】

 症状は,頭痛,精神鈍麻,記憶障害,片麻痺,失語,尿失禁などが単独か組み合わさってみられる.外傷の既往が大半にあるが,多くは程度が軽い.外傷歴がないものも10-20%存在する.抗凝固薬服用や悪性腫瘍硬膜転移によるものもある.前頭・側頭・後頭部にわたることが多く,時に両側性にみられる.血腫は厚い外膜と薄い内膜に包まれ,流動性の血液成分に茶褐色の小塊が混じったものが多いが,キサントクロミーや水様透明のこともある.

【疫学】

 約半数が60歳以上で,年間1-2人/10万人に発生し高齢者でさらに増える.

【経過・予後】

 受傷直後のCTで硬膜下液貯留subdural fluid collectionがあることもあるが,すべてが慢性硬膜下血腫に移行するわけではない.無症状の血腫が自然吸収される例もある.

 一方,症状を呈する際は,わずかでもさらに増大すれば著しく症状が進行するおそれがある.脳ヘルニアをきたし,呼吸抑制や死に至ることもある.

◆診断のポイント

 神経症状は非特異的なため,認知症,正常圧水頭症,脳卒中,加齢変化,抗精神病薬過量投与などとの鑑別を要する.

 頭部CTやMRIにて脳実質を外側から圧迫する病変が,頭蓋骨と脳の間に指摘される.典型的なものは三日月形で均一な高吸収域を示すが,凸レンズ型,低・等吸収域,不均一な吸収域もある.脳萎縮が強く,症状が乏しいにもかかわらず巨大な血腫が発見される例もある.中に隔壁が形成されCT値の異なる多房性血腫例もあ

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