◆疾患概念
【定義・病型】
脳腫瘍術後には麻痺や失語などの局所症状以外に,意識障害をきたす.軽度の意識障害と高次脳機能障害との明確な判別は時として困難である.
脳腫瘍の意識障害の発生様式は脳血管障害に比べ時間をかけて進行する.これは組織型や増殖の速度などの要因により規定されるが,進行性の意識障害は致命的である.意識障害には頭蓋内圧亢進を背景とすることが多く,①腫瘍の増殖や周囲の浮腫の増強に伴って頭蓋内圧が進行性に亢進し意識障害をきたすもの,②腫瘍内出血の合併により突発性の頭蓋内圧亢進が加わる場合,③腫瘍の増大により髄液路の閉塞をきたすことにより閉塞性水頭症・頭蓋内圧亢進をきたす場合,④腫瘍細胞の髄腔内播種により水頭症をきたす場合,⑤頭蓋内圧亢進は伴わずに腫瘍の意識中枢への直接進展,⑥けいれん発作による一時的意識障害,⑦電解質・内分泌学的異常の併発などに分類できる.これらの病態が術後に修飾され器質性精神障害が出現する.
第三脳室近傍の脳腫瘍(頭蓋咽頭腫,鞍結節・嗅窩部髄膜腫),前頭葉脳梁に浸潤した神経膠芽腫,転移性脳腫瘍などは感情や意欲の障害を伴った意識内容障害や覚醒障害を起こすことがある.患者は無動性無言や前帯状回症候群を呈し,開眼し追視運動がみられるが,終日動かず意欲がなく抑うつ的である.
意識障害に付随して高次脳機能障害もさまざまな要因できたしうる.特に前頭葉障害によるもののなかでも前頭前野は損傷されても神経脱落症状が目立たず,silent areaとよばれ浸潤性の脳腫瘍ではこの部を含む前頭葉切除術が一般的に行われてきた.脳機能評価の手法が進歩し,これらsilent areaの中にも高次脳機能を有する領域が示されることにより,腫瘍摘出においてもその機能を考慮すべきことが指摘され始めている.
【意識障害の発生機序】
意識は脳幹網様体賦活系と視床下部調節系の二重支配が重視されて
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