糖尿病による急性の精神症状・意識障害
◆低血糖に伴うもの
【病態・病因】
低血糖症状は交感神経刺激症状と中枢神経症状に大別できる.交感神経刺激により,発汗,動悸,頻脈,振戦,焦燥感などの症状がみられるが,罹病期間,自律神経障害,β遮断薬服用などで無自覚になることがある.一方,重篤な低血糖に伴う中枢神経系機能低下は,不穏,支離滅裂な会話,目的動作の困難,けいれんなどの精神・神経症状を発症し,昏睡に至る場合もある.
【治療方針】
ブドウ糖薬またはショ糖の経口摂取が基本であるが,経口不能な場合はブドウ糖薬静注を行う.糖尿病患者の意識障害では,まず血糖測定を行うことが望ましいが,不可能な環境ではブドウ糖を投与してから鑑別を進めていくのがよい.
◆高血糖に伴うもの
【病態・病因】
高血糖性の意識障害を伴うものとしては,糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高血糖高浸透圧昏睡(HHNC)が知られている.いずれの場合も,生命的危険がある重篤な病態である.高血糖時に舞踏病様症状を伴う症例もある.
【治療方針】
集中治療室(ICU)管理が可能な医療機関に搬送する.
◆可逆的な認知機能の低下
【病態・病因】
認知症がなくても高血糖によって,可逆的に情報処理速度,作動記憶,語想起,注意力などが低下するといわれている.その閾値はおおむね270-300mg/dLと考えられている.
認知症
【背景】
高齢者糖尿病では認知症がなくても脳機能(特に記憶,注意,前頭葉機能)が低下している場合がある.糖尿病による認知機能の低下は,代謝性要因,脳萎縮,脳血管疾患などが関与していると考えられる.HbA1cが1%上昇すると軽度認知機能障害と認知症を含めたリスクが1.4倍になるとの海外の報告がある.一方,重篤な低血糖は認知症の相対危険度を増加させることも報告されている.また,インスリン抵抗性は海馬萎縮のリスクになるとの報告がある.
◆脳血管
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