診療支援
治療

悪性腫瘍に伴う精神症状
psychiatric symptoms due to malignant tumor
井上真一郎
(岡山大学病院・精神科神経科)
内富庸介
(国立がん研究センター中央病院支持療法開発センター・センター長)

◆疾患概念

【定義・病型】

 担がん患者においては種々の精神症状が出現しうる.症状性精神障害としては,低栄養に伴うビタミン欠乏症(ウェルニッケ-コルサコフWernicke-Korsakoff症候群やペラグラ脳症),尿毒症性脳症,肝性脳症などのほかに,腫瘍随伴症候群paraneoplastic syndromeとして,悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症,異所性ADH産生腫瘍による低ナトリウム血症(SIADH),異所性ACTH産生腫瘍によるCushing症候群,腫瘍の遠隔効果による傍腫瘍性辺縁系脳炎などがある.また,器質性精神障害としては,脳腫瘍あるいは転移性脳腫瘍などがある.そのほかにも放射線治療や化学療法,オピオイドやステロイドなどの副作用による精神症状を認めることもあり,またストレス反応としての不安・抑うつ状態なども起こりうる.よって,担がん患者の精神症状に対応するためには,上記のような疾患につ

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