◆疾患概念
【定義】
不眠障害とは適切な環境で眠ろうとしているのに寝つけなかったり,中途覚醒や早朝覚醒があったりして,日中の活動に支障がある状態である.従来は精神生理性不眠症,特発性不眠症,逆説性不眠症などと細分していたが,これらが明確に異なる表現型でないという理由から,DSM-5では不眠障害,ICSD-3では慢性不眠障害と一括して呼称するようになった.
不眠障害の診断基準は,①入眠困難,睡眠維持困難,早朝覚醒のいずれか1つがあり,②日中の機能障害を呈し,③週に3夜以上みられ,④3か月以上持続するというものである.回復感のない睡眠,いわゆる熟眠障害は,入眠困難や睡眠維持困難などと関連して訴えられるので,独立した不眠症状とはみなされなくなった.
不眠障害による日中の機能障害には,疲労感,注意集中困難,作業効率低下,気分不快,眠気,多動,気力低下,間違いの増加,夜間睡眠へのこだわりなどがある.QOLが低下し,生活習慣病が悪化し,長期欠勤やうつ病の発症が懸念される.
【病態】
ストレスのある出来事,環境変化,睡眠スケジュールの変化などをきっかけに生じる急性不眠は,数日から数週間持続して状況が改善すれば消失する.しかし,心理的な脆弱性をもつ人は状況が改善したあとも不眠が持続したり,軽微な出来事で再発することがある.
精神生理性不眠症は不眠障害の中核群であり,偶発的な不眠をきっかけに不眠に対する不安・恐怖感が生じて,夜になると眠ろうと努力してかえって目がさえてしまう.夜間だけでなく日中も過覚醒状態にあり,昼寝をしようと思っても寝つけないことがある.元来几帳面で神経質な性格の人に生じやすい.
特発性不眠症は子どものときから寝つきが悪く,しばしば幼児期から症状がみられる.遺伝的体質が関与すると考えられるが,関連遺伝子は見つかっていない.
逆説性不眠症は睡眠状態誤認ともよばれ,客観的には寝てい
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