診療支援
治療

消化器系の心身症
psychosomatic diseases of the digestive system
福土 審
(東北大学大学院教授・行動医学/東北大学病院・心療内科長)

◆疾患概念

【定義・病型】

 心身症とは,身体疾患のなかで,その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう.ただし,神経症やうつ病など,他の精神障害に伴う身体症状は除外する(日本心身医学会の定義,1991年).すなわち,心身症は単一疾患概念ではなく,病態概念である.心理社会的因子の最も代表的なものはストレスであるので,心身症はストレスによって発症・増悪する身体疾患であると換言できる.

 心身症の病態は,あらゆる身体疾患に生じうるが,心身症の病態を呈しやすい疾患群がある.内科の器質的疾患としては虚血性心疾患,本態性高血圧,気管支喘息,消化性潰瘍,潰瘍性大腸炎,糖尿病,甲状腺機能亢進症,関節リウマチなどがこれに該当する.また,機能的障害としては起立性低血圧,過換気症候群,機能性ディスペプシア,過敏性腸症候群,片頭痛,緊張型頭痛などが挙げられる.このほかにもアトピー性皮膚炎,円形脱毛症,慢性疼痛などがある.消化器系心身症とは,これらのうち,消化器にみられる心身症の病態を総称したものである.心身症の病態をきたしやすい消化器疾患を表1に挙げる.

【病態・病因】

 心身症を診療するうえで欠かせない概念は心身相関である.心身相関とは脳と末梢臓器の機能的関連を指す.臨床的にはストレスによって発生もしくは増悪する身体の変化をいうが,それだけでなく,身体の変化によって情動が影響される現象も含まれる.よって,心身症の診断には,①身体疾患bio,②心理社会的因子psychosocialの両面の把握が不可欠である.例を挙げると,心理社会的ストレスにより,腹痛と下痢をきたす過敏性腸症候群の患者は心身症と診断してよい.同時に,この患者において不安,うつ,身体化などの心理機制が強ければそれらに沿った心理診断を併存して下す.心身症の病態は神経症・うつ単独による身体症状で

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