◆定義
抗うつ薬とは,抑うつ症状の改善を主な目的として使用される薬剤の総称である.1950年代後半に,当時結核治療薬として使用されていたiproniazid,および抗精神病薬として開発されていたイミプラミンに抗うつ作用が発見され,その開発の歴史が始まった.のちに,前者にはモノアミン酸化酵素阻害作用が,後者にはモノアミン再取り込み阻害作用が見いだされ,うつ病のモノアミン仮説が生み出される背景となった.
◆適応
A.うつ病
抗うつ薬の適応症は,「うつ病・うつ状態」である.これは,DSM診断では,気分変調症を含む,抑うつ障害群全般に相当する.そのなかでも特に,うつ病(DSM-5)が最も重要な適応症である.
うつ病の診断は,詳細な問診により得た情報を用いて,操作的診断基準(DSMもしくはICD)に準拠して行う.問診では,過去の躁病・軽躁病エピソードについて,慎重に評価することが大切であり,双極性障害との鑑別が重要である.
抑うつエピソードのスクリーニングには,自己記入式の「こころとからだの質問票」(http://www.cocoro-h.jp/depression/checksheet/index.html)や,「M.I.N.I.-精神疾患簡易構造化面接法」(星和書店)などが使用可能である.また,双極性障害との鑑別には,「Mood Disorder Questionnaire(MDQ)日本語版」や「Bipolar Spectrum Diagnostic Scale(BSDS)日本語版」などのツールが参考となる(⇒第3章 気分障害の疾患概念,大うつ病).
B.双極性障害の抑うつエピソード(双極性うつ病)
双極性障害の抑うつエピソードは,うつ病のそれと,明確に区別されてこなかった.そのため,双極性うつ病に対して,抗うつ薬が処方されることも多かった.しかし,近年,両者に,薬物反応性の違いが存在
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