診療支援
治療

症状精神疾患の見方
method of correspondence of symptomatic psychosis
新井久稔
(北里大学講師・救命救急医学)

◆症状精神病の定義

 症状精神病symptomatic psychosisは脳以外の身体疾患によって二次的に脳の機能が障害されて起こる精神疾患をいう.基礎疾患にかかわらず共通の症状が認められ,これは急性期には意識障害を中心にせん妄やもうろう状態,錯乱状態,幻覚症などが現れる.

 意識障害が回復していくと健忘症候群が出現してくる.通常は基礎疾患の回復とともに症状は消失していくが,重症な場合には認知機能の低下を認めることがあり,非可逆的な経過をたどることがある.脳以外の身体疾患も長期間持続した場合は,脳に何らかの器質的な変化を引き起こすことがあり,脳に影響を与えれば精神症状を呈することになるため,ICD-10診断基準では症状性精神障害を含む器質性精神障害としている.

 「脳疾患,脳外傷,その他の損傷など,基礎に大脳の機能不全をきたす明らかな病因をもつ一群の精神障害が含まれる.機能不全は,脳を直接的にあるいは好んで侵す疾患,外傷または損傷の場合のように一次性のこともあれば,多数の臓器や器官系統のただ一部として脳が侵される全身性の疾患や障害の場合のように二次性のこともある」(ICD-10診断基準.F0;症状性を含む器質性精神障害)としており,器質性精神障害のなかに症状性精神障害を含めている.

 また,アルコールや薬物による脳障害は,ICD-10診断基準においては別に分類されている.

◆原因となる身体疾患と薬剤

 さまざまな身体疾患や薬剤が症状精神病の原因となる.主要な原因となる身体疾患において以下のものが挙げられる(表1).①感染症,②内分泌疾患,③血液疾患,④代謝障害,⑤膠原病,⑥心肺疾患.

 そのほかにも症状精神病の原因となる身体疾患は多岐にわたり,特に身体疾患が重症化するとさまざまな精神症状をきたす.

 精神症状の原因となる薬剤も多くみられる(副腎皮質ステロイド,向精神薬,抗不整脈薬など)

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?