診療支援
治療

神経症状を伴う精神症状
psychiatric symptoms with neurological abnormalities
加藤正樹
(関西医科大学准教授・精神神経科学)
吉村匡史
(関西医科大学総合医療センター病院准教授・精神神経科)

◆定義

 幻覚・妄想状態,錯乱状態などの精神症状や認知症症状などが前景に発現しており,精神科救急に運ばれて来た患者が,実はそれらの症状は,一次的なものでなく,身体疾患に起因する二次的なものであることも少なくない.ここでは,そういった身体疾患により,二次的に精神症状が発現しているものを“神経症状を伴う精神症状”として定義する.

◆分類

 神経症状を伴う精神症状は多岐にわたる.そういった疾患のうち精神科救急に搬送されてくるケースの状態像は,錯乱・せん妄や,幻覚・妄想状態などの精神病様状態,認知症状態,不安・抑うつ状態,けいれん発作が前景となることが多い.しかしながら,それらの疾患が呈する精神症状は,単一の状態像に収まらずに,多彩な症状を表出することが多い.

◆鑑別のための特徴と対応

 前景となりやすい状態像ごとに,臨床上重要な疾患を鑑別するための特徴と対応を示す.

A.精神病様状態

 精神科救急で遭遇する,身体症状に起因する精神病様状態は,おおむね,意識変容,意識狭縮,中程度の意識混濁といった意識障害を伴うことが多く,状態像としては錯乱状態,もうろう状態,せん妄,アメンチアを呈する.下記疾患の鑑別が特に重要となる.

1.脳炎

・精神症状:精神症状は多彩であり,意識障害をベースとして幻視,異常行動を伴う錯乱,せん妄状態を呈する.

・鑑別のための特徴:これまでに精神症状の既往がない.発熱や頭痛などの感冒症状に引き続き,あるいは同時に急性の精神症状を呈する.髄液検査所見で髄液圧の上昇,細胞数の増加.脳波で非特異性全般性高振幅徐波.卵巣奇形腫の併発(抗NMDA受容体脳炎).

・対応:迅速な診断と全身管理が必要であるため,すみやかに集中治療室を備えた医療機関との連携をはかる(詳しくは参照).

2.アルコール離脱・せん妄

・精神症状:見当識障害,焦燥感,易刺激性とせん妄,錯乱が前景.

・鑑別のための特徴

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