腹痛は外来診療の10%を占め,原因は胸部や腎尿路などを含めた多岐にわたるが,ウイルス性腸炎や便秘が多く,むやみに腹部X線などのスクリーニング検査をするべきではない.まず,緊急性の有無の判断が第一に求められ,重症度に応じて検査をする.また,疾患ごとの好発年齢があることに留意する.
●病態
・腹痛は内臓痛,体性痛,関連痛に分けられる.内臓痛は内臓の伸展,膨張,収縮,圧迫,捻れなどにより生ずる境界不明瞭な鈍痛である.
・体性痛は,炎症が周囲の結合織や腹壁に及ぶと発生する持続性で,局在性の鋭い疼痛である.関連痛は原因臓器とは離れた部位に生ずる皮膚疼痛である.
●治療方針
A.診察
1.全身状態の把握
診察室に患児が入ってくる様子(意識,顔色,表情,姿勢など)を観察する.また,バイタルサインを測定し,全身状態を把握する.
2.病歴聴取
年齢,発症時期,腹痛の部位と強さ,性状(急性・慢性,持続的・断続的,増悪・改善傾向,発生する時間・状況),随伴症状(発熱,嘔吐など),排便状況(回数,便性状,血便,排便時痛),体重の変化,既往歴,手術歴,服薬歴,家族歴,食事内容,感染症の流行,月経周期などを聴取する.
B.身体所見
1.視診
顔色,結膜の充血・黄染,呼吸様式,姿勢,腹部(膨満の有無やその部位,手術痕の有無など),四肢の紫斑など全身を観察する.また,鼠径部,陰部,肛門の視診も診断の手がかりとなる.
2.聴診
腹痛の原因が多彩であることを念頭に心音,呼吸音も聴診する.蠕動音は麻痺性イレウスでは低下,機械性腸イレウスでは金属音が聴取され,急性腸炎では亢進・減弱ともにありうる.
3.打診・触診
打診,触診の順で疼痛が弱いところから行う.打診では鼓音は消化管ガスの貯留,濁音は充実臓器,腫瘤,腹水貯留を示す.また,触診は腹腔内臓器をイメージして,肋弓下から鼠径・恥骨結合まで行う.患児の表情の変化や,反跳痛,筋性防御な