診療支援
治療

吐血,下血
hematemesis,melena
浮山越史
(杏林大学小児外科学・教授)

●病態

・血液を伴う嘔吐が吐血であり,肛門からの血液の排出がみられることが下血である.タール便(黒色)は,胃や小腸などの上部消化管からの出血であり,鮮血は,大腸や肛門などの下部消化管からの出血である.

・原因としては,消化管の損傷によるもの,凝固異常によるもの,血液を飲み込んだものがある.

・消化管損傷による吐血は,胃炎(AGML:acute gastric mucosal lesionなど),逆流性食道炎,胃十二指腸潰瘍,食道静脈瘤破裂,腫瘍,異物,外傷などがある.

・消化管損傷による下血は,腸炎(病原性大腸菌など),潰瘍性大腸炎,Meckel(メッケル)憩室,腸重積症,腸回転異常症,小腸軸捻転,結腸ポリープ〔Peutz-Jeghers(ポイツ・ジェガース)症候群,家族性ポリポーシスなど〕,腸管重複症,IgA血管炎,痔(裂肛,内痔核,外痔核など),肛門脱,腫瘍,異物,外傷,ミルクアレルギーなどがある.

・凝固異常による吐血・下血は,新生児のビタミンK欠乏症,肝障害(胆道閉鎖症,肝炎など),播種性血管内凝固症候群(DIC),先天性血液凝固異常症(血友病など),白血病などがある.

・血液を飲み込んだものは,仮性メレナ,鼻出血,呼吸器系からの出血(気管出血,肺出血)などがある.

●治療方針

 小児では本人からの訴えはないことが多いことと,予備能が少ないことから急激に悪化することがある.そのため年齢,吐血・下血の性状,腹痛や発熱などの随伴症状から疾患を想定し,迅速に検査を行って診断し,治療をする必要がある.

 バイタルサインの異常があれば,まずその治療をする.貧血があれば輸血を行い,凝固異常があれば新鮮凍結血漿の輸血を行う.また,出血が続いているかどうかの判断も重要である.吐血があれば,胃管を挿入し,胃内に血液があるかどうか判断し,下血があれば,肛門診と肛門鏡で直腸に血液の有無を判断する.

 持続す

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