診療支援
治療

新生児ショック
management of shock in critically ill neonates
増谷 聡
(埼玉医科大学総合医療センター小児科・教授)

治療のポイント

・原因に対する治療と,循環の立て直しが2本柱である.

・新生児以外のショックとは,胎児循環からの循環移行,未熟な自己調節能,血管脆弱性の点で異なる.

・原因と病態はさまざまである.

・循環への介入をすみやかに開始し,治療と並行して評価を行いPDCAサイクルをまわす.

・前負荷・後負荷・収縮性・拡張性・心拍数の各要素のどこに問題があるのかの評価とフォローが,治療最適化に必須である.

●病態

・ショックは,全身組織が必要とする酸素・栄養を心血管が十分に供給できず,細胞機能障害から代謝性アシドーシスが進行する生命の危急的事態である.

・新生児ショックの原因・病態は多岐にわたり,治療の方向性が大きく異なる.病態解明前でも治療を開始しながら,時々刻々と変化する病態を把握し,治療を軌道修正していく必要がある.

・病態は分布の異常(敗血症など),循環血液量減少,閉塞性(静脈還流障害など),心原性の4つに大きく分かれる.

●治療方針

 上下肢酸素飽和度,心電図のモニタリングを開始し,手早くバイタルサイン(+血圧),意識,呼吸,皮膚色調をみてショックと認識する.酸素を開始し,のちに酸素が病態を悪化させる心疾患とわかれば原則中止する.非代償性ショック・無呼吸・換気不全なら挿管・呼吸管理とする.静脈路は順次2本確保し,困難な際は臍静脈や骨髄路も考慮する.この際,血液培養や血型・クロスマッチ用の採血も行う.

 以下のさらなる治療を開始しながら,適時・短時間の心エコー検査で,前負荷・後負荷・収縮性・心嚢水の有無を評価する.ショックの原因に対する治療を並行して行う.原因の改善は,治療の奏効に必須である.

a.容量負荷 敗血症や体液喪失の頻度が高いため,容量負荷を開始する.

Px処方例

生理食塩液 10~20mL/kg(30~60分またはそれ以上)

 投与途中での評価が必要である.特にショックが心原性とわかれば漫然と

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