診療支援
治療

新生児の低血糖症
neonatal hypoglycemia
依藤 亨
(大阪市立総合医療センター小児代謝・内分泌内科・部長)

●病態

・出生直後,在胎中の高インスリン血症を反映して新生児の血糖値は生後1~2時間で出生時の50~60%まで低下するが,同時に起こる血中カテコールアミン,グルカゴンの上昇を反映して以後上昇に転じる.相対的インスリン高値は生後2~3日で軽快し,グリコーゲン分解,糖新生などによるブドウ糖産生が回復して,以後の血糖値は年長児同様の値となる.

・新生児の低血糖症は,低出生体重に伴う生理的変動の過剰のほか,インスリン過剰(先天性高インスリン血症,インスリン拮抗ホルモン欠損症),グリコーゲン分解異常(肝型糖原病)や糖新生異常症(脂肪酸酸化異常症,カルニチン代謝異常症など)により起こる.

・哺乳確立後も持続する低血糖症のほとんどは先天性高インスリン血症,まれに拮抗ホルモン欠損症により起こる.その他の先天代謝異常症による低血糖は哺乳確立とともに消失し,離乳時期以降に再発する.

・先天性高インスリン血症は生後48時間以降で血糖<50mg/dLの際のインスリン>1μU/mLにより診断される.

・病態に応じた治療が必要である.

●治療方針

A.生理的低血糖症に対する治療(米国小児科学会,米国小児内分泌学会ガイドラインによる)

 哺乳または生理的糖新生量のブドウ糖輸液を行う.生後<48時間では血糖>50mg/dL,以後は血糖>60mg/dLを目標とする.

 下記処方例で血糖が維持できないときは,先天性高インスリン血症など病的低血糖を考える.

1.血糖<40mg/dLで症状があるとき

Px処方例

10%ブドウ糖液 1回2mL/kg 静注後,ブドウ糖静注量(GIR)7mg/kg/分で持続静注

2.生後4時間以内で血糖<25mg/dLで無症状のとき

 初回哺乳し,1時間後に血糖再検.

3.初回哺乳後1時間で血糖<25mg/dLのとき

‍ 1.であげた処方を用いる.

4.初回哺乳後1時間で血糖25~40mg/dLのとき

 再哺乳または

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