●病態
・Noonan(ヌーナン)症候群(NS)は特徴的顔貌,骨格異常,低身長,先天性心疾患,血液・リンパ系異常,停留精巣,知的障害などの多彩な特徴を呈する,ほとんどが常染色体優性遺伝形式の先天異常症候群である.RAS/MAPKシグナル伝達経路(PTPN11,SOS1,RAF1など)の遺伝子変異が同定されている.
・同経路の遺伝子変異で生じるCostello(コステロ)症候群やCFC症候群などの類縁疾患を含め「RASopathies」と総称される.厚生労働省のNSの診断基準が公表されている.
●治療方針
根本治療はないが,合併症状に対して管理・治療を行う.詳細は成書にまとめられている.原因遺伝子変異によって各症状の合併率,表現型が異なる点に注意が必要である.
A.低身長
NSでみられる低身長は通常成長ホルモン(GH)分泌不全を伴わないが,GH感受性の低下が関連しているとされ,GH治療には一定の効果が認められる.2017年11月にGH治療が保険適用となった.日本内分泌学会が,本症でのGH治療について診療の手引きを公開している.
Px処方例
ノルディトロピン薬 フレックスプロ注 1週間に0.23mg/kg〔ソマトロピン(遺伝子組み換え)として〕を6~7回に分けて皮下注
B.先天性心疾患
肺動脈狭窄,肥大型心筋症を中心に全体の50~90%で心疾患を合併する.個々の合併症の治療のほか,心臓の経過観察が生涯必要である.
C.神経症状
定期的な発達のスクリーニングが必要である.運動発達は遅れることが多い.一方,多くは正常の知能を獲得するが,25%程度では学習障害を認める.時に中枢神経系奇形の合併により,頭痛や中枢神経症状をきたすことがある.
D.血液学的異常
約1/3で凝固因子異常がみられるほか,血液腫瘍・固形腫瘍ともに一般集団より高率である.
E.リンパ管異形成
胎児水腫や四肢などのリンパ浮腫がみられる
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/ソマトロピン(遺伝子組換え)《グロウジェクト ジェノトロピン ノルディトロピン ヒューマトロープ》
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/汎発性黒子症(LEOPARD症候群)
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/Albright症候群
- 臨床検査データブック 2023-2024/神経特異エノラーゼ〔NSE〕 [保] 142点(包)
- 新臨床内科学 第10版/6 成長ホルモン分泌不全性低身長症
- 新臨床内科学 第10版/(1)MELAS,MERRF,カーンズ-セイヤー症候群,リー脳症
- 新臨床内科学 第10版/6 IPEX症候群など
- 今日の小児治療指針 第17版/18トリソミー症候群
- 今日の診断指針 第8版/アミロイドニューロパチー
- 今日の小児治療指針 第17版/1p36欠失症候群
- 今日の診断指針 第8版/ミトコンドリア病
- 今日の小児治療指針 第17版/Williams症候群
- 今日の小児治療指針 第17版/Niemann-Pick病
- 今日の小児治療指針 第17版/GM1/2ガングリオシドーシス,異染性白質ジストロフィー,クラッベ病