治療のポイント
・「成人成長ホルモン(GH)分泌不全症の診断と治療の手引き」(厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班)が提案されているので適宜参照されたい.
・GH分泌不全(GHD)の診断を正しく行うことが重要である.
・治療開始直前,開始後1年間の身長の正確な測定が臨床的に重要である.
・軽症GHDに対する治療は慎重になされるべきである.
・小児期にGHによる治療歴があっても,成人において再度検査が必要である.
Ⅰ.小児成長ホルモン分泌不全(小児GHD)
●病態
・90%が特発性,10%が器質性(脳腫瘍,頭部外傷,下垂体茎断裂など),遺伝性はまれ.
・成長率低下(成長速度-1.5SD未満)をきたす.3年間続いたと仮定してSD成長曲線1本分,パーセンタイル成長曲線2本分の線を横切る可能性が1年以上続く場合,要注意である.
●治療方針
A.治療内容
ソマトロピン(遺伝子組換え)を,0.175mg/kg/週の量で週6~7回就寝前に皮下注射する.殿部・大腿部・腹部が皮下注射可能であり,脂肪萎縮を避けるために注射部位を毎日変える.患者の体重に合わせて半年ごとに投与量を変更し,GH製剤1本あたりの含有量を考え,無駄なく使い切れるように1回投与量および投与回数を調節する.数か月ごとに一般生化学,IGF-1,甲状腺機能を評価する.高血糖が認められた場合,GHによる耐糖能の異常の可能性があるため,HbA1cをフォローする.
Px処方例
ノルディトロピン薬フレックスプロ注 1回0.025mg/kg 1日1回 週7日 就寝前 皮下注,または1回0.03mg/kg 1日1回 週6日 就寝前皮下注
B.治療効果判定
治療効果は,治療開始後の1年間が最も大きく,GH分泌不全が重症なほど治療効果が大きい.すなわち治療開始直前,および開始後1年間(経験的に3~6か月ごとで十分)の身長測