●病態
・Klinefelter(クラインフェルター)症候群は,47,XXYを典型的核型とする性染色体異常症である.主な症状は,四肢が長い高身長,原発性性腺機能低下症(男性ホルモン産生障害,造精機能障害)である.発症率は男性700人に1人と推定され比較的多いが,未診断例は少なくない.男性ホルモン欠乏の程度により臨床像は幅広く,成人期に男性不妊で診断されることがある.
・二次性徴は不完全であることが多い.思春期以降では血中テストステロン低値とLHおよびFSH高値を認める.染色体不均衡にもかかわらず3コピーのSHOX遺伝子が機能することから高身長になると考えられ,男性ホルモン欠乏により四肢が長いことが特徴的である.
・成人期はすべての患者で不妊症がみられる.出生後に精母細胞は急速かつ年齢依存的に減少し,造精機能障害が起こる.精巣は精細管の硝子化と線維化によって硬くなり,精巣容量は通常6mLを超えない.
●治療方針
二次性徴の出現や発達が不完全であるとき,男性ホルモン補充療法を行う.思春期になっても血中テストステロンの上昇が十分でない場合は,13歳以降で補充療法を開始する.性ステロイドの補充により,骨年齢が進行し成人身長に達する.急速な男性化と骨成熟の促進を防ぐため,補充量は少量より開始し,成長と骨年齢をみながら2~3年かけて漸増する.男性ホルモン補充療法により,陰茎や陰毛の発育,変声は得られるが,精巣容量は増大しない.
成人期の男性ホルモン補充療法により,性生活を可能とする男性化,骨密度の増加が期待される.国内で保険適用のあるテストステロン製剤はエナント酸エステル(エナルモンデポー)である.血中濃度は筋注後急速に上昇し,125mg製剤では14日目以降生理的濃度以下に低下する.欧州などで認可されているウンデカン酸エステル(Nebido)では,筋注後約12週間生理的濃度を維持する.
造精機
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/テストステロンエナント酸エステル《エナルモンデポー テスチノンデポー テストステロンエナント酸エステル》
- 臨床検査データブック 2023-2024/黄体形成ホルモン〔LH〕 [小][保] 108点(包)
- 今日の治療指針2023年版/性腺機能低下症(男性)
- 臨床検査データブック 2023-2024/卵胞刺激ホルモン〔FSH〕 [小][保] 108点(包)
- 今日の治療指針2023年版/無月経と排卵障害
- 新臨床内科学 第10版/1 ゴナドトロピン依存性(中枢性)思春期早発症
- 新臨床内科学 第10版/1 卵巣機能低下症
- 今日の診断指針 第8版/低身長
- 今日の小児治療指針 第17版/低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
- 新臨床内科学 第10版/精巣疾患
- 今日の小児治療指針 第17版/混合性性腺異形成