診療支援
治療

抗リン脂質抗体症候群
antiphospholipid syndrome(APS)
清水正樹
(東京医科歯科大学大学院小児地域成育医療学・講師)

●病態

・抗リン脂質抗体症候群(APS)は,抗リン脂質抗体(aPL)を介して動静脈血栓症や習慣性流死産などの妊娠合併症を呈する疾患である.

・血栓症または妊娠合併症を認め,IgG型またはIgM型の抗カルジオリピン抗体,IgG型またはIgM型の抗β2グリコプロテイン抗体,ループスアンチコアグラントのいずれかが12週間以上の間隔で2回以上検出された場合,APSと診断される(Sydney criteria).

・原発性およびリウマチ性疾患に合併する続発性に分類され,特殊型として広範囲の血栓症で発症し急激に多臓器不全に至る劇症型APSや,小児に特徴的な水痘などに関連する感染症関連APSが知られている.

●治療方針

A.血栓症の急性期の治療

 一般的な血栓症に対する治療と同様に,線溶療法(ウロキナーゼなど)や抗凝固療法(ヘパリン,ワーファリンなど)を行う.免疫抑制薬は原発性には無効であり用いない.

B.再発予防

 aPLが陽性でも,血栓症の既往がない場合は無治療で経過観察する.一方で血栓症を発症した場合には再発率が高いことから,原則再発防止目的に抗凝固治療を行う.

 静脈血栓症で発症した場合には,PT-INR 2.0~2.5,D-dimer陰性を目標に長期ワーファリン治療を行う.動脈血栓症で発症した場合には,抗血小板治療を行う.動静脈両者の血栓症の場合は併用を行う.併用治療中やPT-INRが3.0以上の場合,出血のリスクが増すため注意が必要である.

Px処方例 下記の薬剤を症状に応じて適宜用いる.

➊ワーファリン錠(0.5・1.0mg) 12か月未満:1回0.16mg/kg,1歳以上:1回0.04~0.10mg/kg 1日1回 併用薬剤や食物との相互作用に注意

➋アスピリン末またはバイアスピリン錠(100mg) 1回3~5mg/kg(最大100mg) 1日1回

■専門医へのコンサルト

・劇症型APSが疑わ

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