治療のポイント
・新生児,免疫不全患者は重症化するリスクが高く,疑った時点で早期の抗ウイルス薬の全身投与を行う.
・脳炎などの重症感染症を疑った場合,早期の抗ウイルス薬全身投与を行う.
・重症感染症後や繰り返す感染症に対して,維持抑制療法を行うことがある.
●病態
・単純ヘルペスウイルス(HSV)は二本鎖DNAウイルスであり,一般的に口唇や顔面などに感染するHSV-1と,腰より下の性器などに感染するHSV-2に分類される.
・初感染後,潜伏感染し再活性化を起こす.初感染による病態と,口唇ヘルペス,陰部ヘルペスなどの再活性化による病態に分けられる.
・新生児,免疫不全者のHSV感染症は重症化するリスクが高い.
・鼻粘膜から嗅球経由で神経行性に中枢神経へ感染が拡大すると,単純ヘルペス脳炎を起こす.
・重症単純ヘルペス感染症罹患者のなかに,TLR3欠損などの自然免疫異常がいる.
・多形滲出性紅斑の原因として,重要な病原体である.
●治療方針
A.新生児ヘルペス
経産道感染であり,生後5~14日程度(中枢神経型は生後6週間までありうる)に調子が悪くなる新生児には注意する.
臨床的に以下の3型に分かれる.未治療では70%ほどが死亡する重症感染症であり,疑った時点で治療を開始し,中枢神経・全身管理が可能な医療機関へ移床する.臨床型により予後が異なる.
a)皮膚粘膜型(頻度45%):適切に治療すれば死亡率は0%,未治療では80%が中枢神経型,播種型へ移行する
b)中枢神経型(頻度30%):治療しても死亡率は5%である
c)播種型(頻度25%):最重症型で,治療しても死亡率は30%である
Px処方例 初期治療として➊,その後➋の維持療法を行う.ゾビラックス初期治療中に<500/μLの好中球減少をきたすことがあるが,顆粒球・コロニー刺激因子(G-CSF)を使用しながらでも治療を継続させる.
(初期治療)
➊ゾビラックス
関連リンク
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