診療支援
治療

無菌性髄膜炎症候群
aseptic meningitis syndrome
相澤悠太
(新潟大学大学院小児科学)

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[感]5類

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●病態

・頭痛や項部硬直などの髄膜刺激症状,徴候があるが意識障害がなく,リンパ球優位の髄液細胞数上昇を認め,細菌が原因ではない病態が無菌性髄膜炎症候群と定義される.

・原因はエンテロウイルスが最多で80%以上を占める.次いでムンプスウイルスが多い.単純ヘルペスウイルスや生後3か月未満の早期乳児では,パレコウイルスA3型も原因になる.

・新生児や乳児は頭痛を訴えることはできず,項部硬直も明らかでないことが多い.発熱に伴う易刺激性などが診断の契機になる.

・髄液細胞数は10~500/μLと中等度上昇に留まることが多いが,1,000/μL以上になったり好中球優位のこともあるため,臨床症状,周囲の流行状況,ワクチン接種歴から個別に判断が必要である.

●治療方針

 単純ヘルペスウイルス以外には抗ウイルス薬は存在せず,ほとんどが対症療法のみで自然に軽快する.しかし細菌性髄膜炎の場合でも,髄液細胞数上昇が軽度であったり,グラム染色で菌体がみえないこともあったりするため,診療初期の段階で完全に細菌性髄膜炎を否定することは困難である.そこで予後の悪い細菌性髄膜炎の可能性についてどこまで考慮するべきかが,治療方針決定におけるポイントである.

A.全身状態が安定している年長児で,意識状態の評価が容易な場合

 先行抗菌薬がなければ,抗菌薬を投与せず経過観察が可能である.先行抗菌薬があれば,部分的に治療された細菌性髄膜炎の可能性があり,細菌性髄膜炎として治療を完遂するかを検討する.

B.新生児,早期乳児,全身状態の悪い児

 髄液培養が48時間陰性であることを確認できるまでは抗菌薬投与を行う(「細菌性髄膜炎」).新生児,早期乳児は意識状態の評価が困難な

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