診療支援
治療

A群レンサ球菌感染症(劇症型感染を含む)
group A streptococcal infection,including fulminant infection
西 順一郎
(鹿児島大学大学院微生物学・教授)

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[感]A群溶血性レンサ球菌咽頭炎,劇症型溶血性レンサ球菌感染症:5類

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●病態

・A群レンサ球菌は,小児の細菌性咽頭・扁桃炎の原因のほとんどを占める.

・発熱と咽頭痛で発症し,扁桃の滲出物と軟口蓋に及ぶ咽頭発赤が特徴的である.

・主に5~15歳の小児にみられ,3歳未満の乳幼児ではまれである.

・無症状の咽頭保菌者が小児の5~20%にみられる.

・劇症型感染症は,A群レンサ球菌による菌血症など侵襲性感染症のうち,敗血症性ショックと多臓器障害を伴うものを指す.

・劇症型では,壊死性筋膜炎などの皮膚・軟部組織感染を伴う例が多い.

●治療方針

A.咽頭・扁桃炎

 抗菌薬を使用する目的は,①リウマチ熱の予防,②化膿性合併症の予防,③臨床症状と徴候の改善,④本菌の伝播防止である.急性糸球体腎炎を予防できるというエビデンスはない.

 使用抗菌薬の基本はペニシリン系薬であり,ペニシリン耐性のA群レンサ球菌はみられない.ベンジルペニシリンベンザチン(バイシリンG)の抗菌力が最も優れており第1選択薬であるが,アモキシシリン(ワイドシリン)も推奨されている.リウマチ熱予防と再燃防止のため10日間内服が推奨されている.

 経口第3世代セファロスポリン系薬も第2選択薬としてあげられているが,リウマチ熱予防のエビデンスがない,血中濃度がアモキシシリンと比べて低い,ペニシリン耐性菌を誘導しやすい,低カルニチン血症・低血糖の副作用があるなどの理由で,積極的に推奨できない.臨床効果が同じであれば,あえて広域スペクトル薬を使用する必要はない.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

➊バイシリンG顆粒 1日5万単位/kg(成分量として) 1日3~4回に分けて(最大1回40万単位) 

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