診療支援
治療

無芽胞性嫌気性菌による感染症
infection caused by non-spore forming anaerobic bacteria
伊藤雄介
(兵庫県立尼崎総合医療センター感染症内科)

●病態

・無芽胞性嫌気性菌は,偏性嫌気性菌のうち芽胞をもたない嫌気性菌の総称である(Peptostreptococcus属,Propionibacterium属,Bacteroides属,Fusobacterium属,Prevotella属など.芽胞をもつ代表的な菌種はClostridium属).

・無芽胞性嫌気性菌の多くは皮膚や粘膜,腸管に常在している菌であるが,時にほかの好気性菌や通性嫌気性菌とともに混合感染を引き起こす.

●治療方針

 嫌気性菌単独で感染を起こしていることはあまり多くないため,好気性菌や通性嫌気性菌と合わせた抗菌薬選択を行う.好気性菌や通性嫌気性菌に加えて嫌気性菌のカバーも考えた場合,1剤で治療を行う場合にはβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンやカルバペネム系薬が選択すべき抗菌薬となる.

 一方で,これらの薬剤は感染巣によっては通常カバーの必要のない菌種(例えば緑膿菌など)にも感受性があることがあり,これらの薬剤の代わりにクリンダマイシンやセフメタゾールなどをほかの薬剤と組み合わせることもある.

 メトロニダゾールは多くの嫌気性菌に感受性がある.わが国では小児の適応がまだ承認されていないが,海外では適応もあり積極的に使用されている薬剤であり有効活用するべきである.

 欧米のマニュアルには,第1選択薬としてクリンダマイシンが記載されることも多い.これはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のカバーも含めて想定されているためであるが,わが国ではクリンダマイシンのMRSA感受性率が低くなっており注意が必要である.

 外科的なドレナージが必要である場合が多く,抗菌薬治療と併せてその必要性を常に検討すべきである.

A.深頸部膿瘍

 気道閉塞をきたすこともあり,進行度に注意が必要な疾患である.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

 (軽症例)

➊スルバシリン注 1回50mg/kg(最大

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