診療支援
治療

肺アスペルギルス症
pulmonary aspergillosis
石和田稔彦
(千葉大学真菌医学研究センター感染症制御分野・准教授)

●病態

・経気道的にアスペルギルス胞子を吸入することで生じる外因性感染症である.

・慢性肉芽腫症,高IgE症候群などの原発性免疫不全症,血液腫瘍性疾患で化学療法や骨髄移植を受け,免疫不全状態にある小児の感染リスクが高い.

Aspergillus fumigatusが主体となるが,A.nidulansなどのnon-fumigatus Aspergillusも原因となる.

・好中球減少時には,急性の経過をたどる侵襲性アスペルギルス症を発症しやすい.

・抗菌薬不応の発熱,全身倦怠感などの全身症状と咳嗽,喀痰,血痰,胸痛,多呼吸などの呼吸器症状を伴う.

●治療方針

 基礎疾患と臨床経過,胸部X線・胸部CT(halo sign,air-crescent sign)などの画像検査,血清診断として(1→3)-β-D-グルカン陽性,アスペルギルスガラクトマンナン抗原陽性などから肺アスペルギルス症を疑う.なお抗原検査は,気管支肺胞洗浄液のほうが血清よりも感度・特異度ともに高い.確定診断は,喀痰などの気道局所からの培養検査や病理検査からのアスペルギルスの検出により行う.

A.入院治療を要する場合

 アゾール系抗真菌薬(ブイフェンド)あるいはアムホテリシンB製剤(アムビゾーム)の点滴静注による治療を行う.両者の使用が困難な場合には,キャンディン系抗真菌薬(ファンガード,カンサイダス)を使用する.重症例に対しては,併用療法を考慮する.

Px処方例 下記➊➋のいずれかを用いる.基礎疾患の治療薬との相互作用や臓器障害により使用が困難な場合には,➌または➍の投与を検討する.重症例には➊または➋と➌または➍の併用を検討する.状況により➎を組み合わせる.

➊ブイフェンド注 2歳以上12歳未満および12歳以上で体重50kg未満の場合.初日:1回9mg/kg 1日2回,2日目以降:1回8mg/kg 1日2回 点滴静注,12歳以上

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