診療支援
治療

肺水腫
pulmonary edema
南野初香
(聖隷三方原病院小児科・医長(静岡))

●病態

・肺水腫とはさまざまな原因により肺の血管外水分が過剰になった状態である.

・通常は間質から肺胞への水分漏出は起きないが,さまざまな条件により間質と肺胞のバリアが破綻して肺胞へ水分が溢れ出してくる.このバランスはStarlingの式で説明される.

・水分が間質内にとどまっている場合を間質性肺水腫,肺胞にまで水分貯留が進んでいる場合を肺胞性肺水腫とよぶ.間質の水分はリンパ管で吸収されるが,閾値を超えると間質内に水分が貯留する.

・肺胞サーファクタントが不足するとさらに水分漏出が促進される.一度肺胞内に水分が貯留し始めると加速度的に進行する.

・発生機序により①静水圧上昇による肺水腫(心原性肺水腫や膠質浸透圧の低下),②血管透過性による肺水腫〔広義の急性呼吸窮迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome)〕,③混合型肺水腫(クループ症候群,再膨張性肺水腫,神経原性肺水腫,高地肺水腫,有毒ガス吸入,新生児呼吸窮迫症候群)に分類される(表1).

・水分が肺胞を満たしてくると肺胞でのガス交換が障害されて低酸素血症となり,呼吸困難感,多呼吸を認める.最重症になると血球成分が肺胞内に充満するので,ピンク色の泡沫痰を認める.

●治療方針

 肺水腫はさまざまな原因で生じる病態のため,原疾患の治療が最も重要になる(それぞれの治療は各項目を参照されたい).共通の治療は低酸素血症の改善と水分バランスの調整と合併症予防である.

A.低酸素血症の改善

1.軽症

 マスクなどデバイスを用いて酸素投与を行う.

2.中等症

 酸素投与のみでは改善を認めない場合には,高流量酸素療法(HFNC:high flow nasal cannula)や非侵襲的陽圧換気(NPPV)を導入する.小児の場合にはマスクの受け入れや呑気の問題が出てくるので,NPPVの使用時には見極めが重要となる.

3.

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