診療支援
治療

先天性喘鳴
congenital stridor
吉田之範
(大阪はびきの医療センター小児科・部長)

 先天性喘鳴は,生後数週間以内に吸気性喘鳴をきたす疾患の総称である.

●病態

・呼吸運動により生理的に胸腔外の上気道は吸気時に狭くなり,胸腔内の下気道は呼気時に狭くなる.したがって胸腔外の上気道の狭窄では吸気性喘鳴が聴取される.

・胸腔内外の移行部付近(気管分岐付近)までの狭窄では,吸気・呼気の往復性喘鳴がみられる場合がある.

・出生直後~2週間で症状が出現することが多いが,1~2か月たって換気量の増加に伴い症状が明らかとなる場合もある.

A.気道狭窄の分類

・気道狭窄は固定性狭窄,変動性狭窄,流動性狭窄に分類される.

 a)固定性狭窄:声門下狭窄や気管狭窄などにより喘鳴を常に聴取する

 b)変動性狭窄:喉頭軟化症や気管軟化症,啼泣時声門外転不全などのように,呼吸の仕方や体位などに喘鳴が影響される

 c)流動性狭窄:気道分泌物や唾液による気道の狭窄で,呼気と吸気に往復性喘鳴を聴取することが多い

B.診察のポイント

・問診では以下の点に注意する.

 a)吸気性喘鳴か呼気性喘鳴か

 b)喘鳴の出現の仕方について:体位による変化の有無,覚醒時と睡眠時のどちらが多いか,哺乳時に症状が出やすいのか,啼泣時には症状が出やすいか

 c)犬吠様咳嗽(アザラシの鳴き声様の咳嗽)の有無:本症状がある場合は,声門下や気管の病変を考えるきっかけとなる

 d)体重増加不良,哺乳不良の有無

・視診・触診では以下の点に注意する.

 a)呼吸の仕方と胸郭の様子:陥没呼吸の有無や程度,呼吸数,閉塞性無呼吸の有無,漏斗胸の有無など

 b)小顎症,絶壁型の後頭部,頸部の周囲の腫瘤や血管腫の有無

 c)口腔内の観察:咽頭部の腫瘤や軟口蓋裂の有無

・聴診:喘鳴について以下の点に注意する.

 a)吸気性喘鳴か呼気性喘鳴か

 b)喘鳴の最強点の部位と左右差,体位による変化の有無

 c)哺乳時の喘鳴増強の有無:哺乳時の増悪の有無を確認する場合は,哺乳前後で診察を行う

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?