診療支援
治療

気管・気管支狭窄
tracheobronchial stenosis,tracheo-bronchomalacia
小林久人
(慶應義塾大学小児科)

Ⅰ.気管・気管支狭窄

●病態

・気管狭窄の多くは先天性で,膜様部が存在しないtracheal ringが原因となるパターンや,心血管奇形,食道閉鎖症などを伴い外部からの圧迫が原因となるパターンがある.

・後天性気管狭窄は気管チューブによる外傷,気道熱傷,壊死性気管気管支炎の後遺症などで生じる.

・重症度は狭窄の部位・範囲・程度や,合併奇形の有無などによりさまざまである.

・軽症例でも呼吸器感染症に罹患した際には,呼吸状態が悪化しやすいため注意が必要である.

●治療方針

 集学的な管理を要するため,重症例は管理に習熟した施設に紹介すべきである.なお気管・気管支狭窄は難聴を合併することがあり,一度は確認しておく必要がある.

A.内科的治療

 気管狭窄の症状は成長とともに軽減するため,成長を妨げる増悪因子を抑えるための内科的治療をまずは試みる.腹臥位が有効な場合が多く,乳幼児突然死症候群に注意して監視下で試みる.哺乳後に症状が悪化する症例ではミルクに増粘物質を添加する.

 感染予防としてエリスロマイシン(エリスロシン)やST合剤(ダイフェン)を投与し,有効であれば長期に継続する.エリスロマイシンの投与時には肥厚性幽門狭窄症の発症に,ST合剤の投与時には発疹などの副作用にそれぞれ注意する.なおST合剤は新生児への投与は禁忌である.

 生後1~2か月頃から症状が目立ち始め,体重が4~7kg前後になると気道抵抗と換気流量のアンバランスが生じて症状が増悪することが多い.身体の成長に気管の成長が伴えば,体重が10kgを超える頃から症状が緩和することが多いため,そこまで乗り切れるかどうかがポイントである.

 呼吸困難時にはステロイド全身投与を行い,気管挿管はできるだけ避けてnasal CPAPやhigh flow therapyで管理する.やむを得ず気管挿管した場合は,可及的すみやかに抜去する.

B.外科的治療

 重症

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