●病態
・医療機関で処方される薬だけでなく薬局・薬店で市販される薬や,時にはサプリメントの服用により発症する.
・多くは無症候で検査値の異常のみだが,急性薬剤性肝障害(DILI)では発熱や食欲不振,嘔気・嘔吐,右季肋部痛,黄疸,皮膚瘙痒をきたすことがあり,一部では肝不全に至る.慢性DILIでは肝硬変に進展することがある.
・薬物が肝臓で代謝される過程で,薬物や中間代謝産物により直接的に肝細胞障害をきたす場合や,中間代謝産物がハプテンとして抗原性を獲得し,アレルギー反応が生じて肝細胞や胆管細胞を障害する場合がある.
・臨床病型(表1図)を下記に示す.
a)肝細胞障害型:①ALPやγ-GTP値に比べ相対的に高いASTおよびALT値.②肝障害が高度な場合は直接ビリルビンも上昇
b)胆汁うっ滞型:①ASTおよびALT値に比べ相対的に高いALPやγ-GTP値.②ビリルビン値は早期から上昇
・表1図の基準を参照する際,小児ではALPの基準値が年齢ごとに異なる点に留意する.γ-GTP値とあわせて評価するのがよい.
●治療方針
まず行うべきは原因薬物の中止である.迅速な診断のためには,まず疑うことが大切であり,特に急性肝不全ではDILIを必ず鑑別診断にあげる.
A.肝障害の一般的な治療
ALT 200U/L以上を示す場合や,総ビリルビン3mg/dL以上では入院治療を検討し,安静と栄養補給を行う.経口摂取量が不十分であれば,ブドウ糖液やビタミンの点滴静注を行う.総ビリルビン10mg/dL以上の黄疸の遷延例に対しては,脂溶性ビタミン(A,D,E,K)の不足を補う.
B.薬物療法
薬物治療そのものが肝障害を悪化させることがあるので注意する.
Px処方例 下記➊➋のいずれか,または併用する.
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