診療支援
治療

門脈圧亢進症
portal hypertension
須磨崎 亮
(茨城県立こども病院・病院長)

●病態

・門脈圧が10mmHg以上になると側副血行路が形成されることがあり,これを門脈圧亢進症という.脾腫,血小板減少,胃食道静脈瘤などで診断する.

・門脈系血行の閉塞により門脈圧が上昇する.閉塞部位により肝前性,肝内性,肝後性に分けられる.肝内性では肝硬変が典型的で,小児では胆道閉鎖症術後が多い.

・小児では肝硬変以外の病因,特に肝前性の肝外門脈閉塞症が多い.肝後性にはBudd-Chiari(バッド・キアリ)症候群やFontan(フォンタン)心臓手術後などが含まれる.これらではALT上昇は少なく,本症の見逃しに注意する.

●治療方針

 症状の重症度,原疾患,年齢を考慮して治療法を選択する.肝硬変を伴わない疾患の予後は比較的に良好である.

A.消化管出血と静脈瘤の管理

 胃食道静脈瘤からの出血は致死的になりうるので,集中治療室での管理が望ましい.頻脈や低血圧を伴う場合は,急速輸液や輸血により循環動態を安定化させる.ビタミンK,新鮮凍結血漿や血小板製剤により出血傾向を管理する.バルーンタンポナーデで静脈瘤を圧迫止血する.経鼻胃管を挿入して胃内の血液を吸引する.

 循環動態が安定したら,内視鏡検査を行う.静脈瘤からの出血があれば,内視鏡的静脈瘤結紮術または硬化療法を行う.未出血の場合でも,red color(RC)サイン陽性の場合は内視鏡的治療を行う.

 再出血リスクの高い場合はβブロッカーを内服させ,硬い食材は避けるように指導する.胃静脈瘤ではバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術も考える.再出血を繰り返す場合は,選択的シャント術や肝移植を検討する.

B.脾腫と脾機能亢進,血小板減少

 疼痛や血小板減少による出血傾向など脾腫大に伴う症状があれば,部分的脾動脈塞栓術を考慮する.年長児では脾臓摘出も可能であるが,術前に肺炎球菌ワクチンを接種する.

C.肝性脳症,高アンモニア血症

 便秘を避け,ラクツロースやリ

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