治療のポイント
・急性心不全では臓器灌流不全を防ぐため血圧を維持,利尿を確保し呼吸循環を安定させ慢性心不全病態にもち込む.
・慢性心不全では,神経体液性因子の賦活を伴う心血管リモデリングの進行を抑えるための生活と内服の管理が中心となる.
・治療に関しては日本循環器学会の「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」,日本小児循環器学会の「小児心不全薬物治療ガイドライン(平成27年改訂版)」を参照されたい.
●病態
・うっ血心不全とは「心臓機能障害が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,下腿浮腫,胸腹水などの臓器うっ血症状を伴い,呼吸困難や倦怠感が出現し,運動耐容能が低下した臨床症候群」である.
・心臓機能障害は心筋や弁の器質的および/あるいは機能的異常を指し,これらの異常に対する代償機能が破綻し,肺静脈や全身臓器の静脈にうっ血が生じる.これらの病態では循環破綻を代償すべく神経体液性因子が賦活し,虚血や炎症などにより心室肥大などのリモデリングが進行する.
・小児の場合のうっ血性心不全の多くは,先天性心疾患や小児期発症の心筋炎や拡張型心筋症を基盤とする場合が多い.うっ血心不全は,その発症経過から急性あるいは慢性に分類される.
・先天性心疾患の場合には単心室,心内外に短絡を有する複雑な心血行動態であることが多く,ここでは二心室を有する修復された先天性心疾患術後,あるいは小児期発症の拡張型心筋症などを念頭においた解説を行う.
●治療方針
A.急性心不全
急速に心ポンプ機能の代償機転が破綻し,心室拡張末期圧の上昇や主要臓器への灌流不全をきたし,それに基づく症状や徴候が急性に出現,あるいは悪化した病態である.心筋炎や一部の拡張型心筋症のように急激に発症する場合と,慢性心不全(後述)が急性増悪する場合がある.
治療には全身の「うっ血」と「低灌流」の有無によるNohria-Stevenson分