●病態
・主に左心室のびまん性収縮障害と左室拡大を呈する疾患群と定義されており,さまざまな原因により同病態を呈する.
・罹患頻度は1999年の厚生省特発性心筋症研究班の全国調査によると,人口10万人あたり14人の罹患率であり,小児症例は年間50人前後の新規発症または10万人あたり1人の罹患率といわれている.
・原因としては,成人領域では虚血性,高血圧性心筋症が原因として多く,アミロイドーシス,心サルコイドーシス,アルコール性,低栄養も原因となりうる.小児においては,遺伝性(家族性),心筋炎,不整脈,左室緻密化障害,筋ジストロフィーが原因として多くみられるが,Fabry(ファブリー)病,Danon(ダノン)病,ミトコンドリア病なども鑑別の対象となる.近年,小児悪性疾患の治療向上により,成人期に薬剤性心筋症を発症する症例が徐々に増加してきている.
・症状は不機嫌,易疲労感などの不定愁訴が主で,多呼吸・呼吸困難,起座呼吸などの呼吸器症状,顔色不良や四肢末端の冷感,消化器症状などの循環不全症状も認める.
・検査は,胸部X線,心電図,エコー,採血(BNP,hANP含む)を基本とし,心筋シンチ検査,心臓MRI,心臓カテーテル検査(冠動脈造影含む)も病態に応じて有用である.
・一部,乳幼児発症症例で予後良好な症例が存在するが,一般的には予後不良である.以前より予後は改善してきているが,5年生存率は成人症例も含めて76%といわれている(「循環器病の診断と治療に関するガイドライン2009-2010年」).
●治療方針
A.急性期治療
来院時のエコーでほとんど心臓が動いていないレベルの急性心不全を経験する.安静,酸素投与,必要であれば集中治療室管理,人工呼吸管理をためらわないことが肝要である.
急性期治療はNohria-Stevenson(ノーリア・スティーブンソン)分類の考え方から,心拍出量と中心静脈圧の値