●病態
・心筋緻密化障害は,心室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を形態的特徴とする心筋症であり,心内膜側に非緻密化層,心外膜側に緻密化層の2層構造を有する.
・遺伝子異常のほかにも染色体異常,筋疾患,ミトコンドリア筋症などの疾患に合併してみられることがあり,多数の原因がある.
・臨床症状は心不全,不整脈,血栓塞栓症である.心不全は半数以上の患者に合併し,左室収縮不全は84%の患者にみられる.不整脈もよくみられる合併症である.心房細動は25%に,心室頻拍は47%の成人患者にみられる.突然死は,不整脈を有する心筋緻密化障害の患者の半数程度に認められる.血栓塞栓症のイベントは成人例に多い.
●治療方針
心筋緻密化障害に特異的な治療はなく,心拡大や心機能の低下が認められれば拡張型心筋症に準じ,利尿薬,ACE阻害薬,β遮断薬などによる心不全の治療を行う.
複雑な肉柱構造のため血栓形成が高頻度であり,抗血小板療法や抗凝固療法を行い,塞栓を予防することが重要である.不整脈や心機能低下を有する患者には抗凝固薬の投与が推奨される.アスピリンは早期から開始することが推奨される.
重症例では心移植の対象になり,欧米では心移植が積極的に施行されている.また高率に不整脈を合併するため,抗不整脈薬,ペースメーカーや除細動器の植込みが必要になる例がある.
■患児・家族説明のポイント
・発症の時期は,症例により新生児期~乳児期,学童期~思春期,あるいは成人と発症時期は幅広く,臨床像が多彩である.
・新生児期,乳児期発症例は重篤な心不全症状で発症し,10~15年で約半数は心移植あるいは死亡している.
・患者家族の検索や心電図検診などで発見された若年発症例は,無症状で長い間経過し,10~15年で心移植あるいは死亡する症例は1~2割である.
参考文献
1)Towbin JA,et al:Left ventricular non